発達障害エンジニアのチーム開発サバイバル術|非同期コミュニケーションで輝く方法

「チーム開発が苦手…」「毎日のスタンドアップミーティングが苦痛」「Slackの通知で集中できない」
一人で黙々とコードを書くのは得意でも、チーム開発となると途端に辛くなる。そんな発達障害エンジニアは多いのではないでしょうか。
でも大丈夫。適切な戦略と工夫があれば、チーム開発でもあなたの実力を発揮できます。むしろ、非同期コミュニケーションが主流の今、発達障害エンジニアにとってはチャンスかもしれません。
なぜチーム開発が辛いのか
ADHD の場合
チーム開発での困りごと
- 割り込み:集中が途切れて戻れない
- 会議:長時間座っているのが苦痛
- マルチタスク:複数のタスクを忘れる
- 締切:見積もりが甘くて遅れる
- コミュニケーション:思いつきで発言して後悔
ASD の場合
チーム開発での困りごと
- 曖昧な指示:何をすればいいか分からない
- 暗黙の了解:言われてないルールで怒られる
- 変更:急な仕様変更でパニック
- 雑談:技術以外の会話が苦手
- コードレビュー:批判と捉えて傷つく
非同期コミュニケーションという救世主
同期 vs 非同期
コミュニケーション方法の比較
項目 | 同期的(リアルタイム) | 非同期的 |
|---|---|---|
方法 | • 会議(全員同時参加)<br>• ペアプロ(画面共有)<br>• 口頭での相談 | • ドキュメント(各自の時間で)<br>• PR/Issue(好きな時に)<br>• Slack(都合の良い時に) |
メリット | 即座に解決できる | 自分のペースで対応できる |
デメリット | • 集中が途切れる<br>• プレッシャーを感じる | 時間がかかる場合がある |
非同期が発達障害者に優しい理由
- 考える時間がある
- 集中を妨げられない
- 文書で残るので忘れない
- 感情的にならずに済む
- 得意な表現方法を選べる
実践的なサバイバル術
1. Slack/Discord 攻略法
通知を制御する
時間帯別の通知設定
- 9:00-12:00:通知OFF(集中タイム)
- 13:00-14:00:メンション・DMのみ
- 14:00-17:00:重要チャンネルのみ
キーワード通知の設定
- @here
- @channel
- 緊急
- deadline
返信タイミングのルール
種類 | 返信目安 |
|---|---|
メンション | 1時間以内 |
DM | 2時間以内 |
一般メッセージ | 当日中 |
効果的な返信術
## すぐに返信できない時の定型文
### 確認だけする
"確認しました。後ほど詳細を返信します 👀"
### 時間が必要な時
"ありがとうございます。○時頃までに確認して返信します 🕐"
### 集中したい時
"現在集中作業中のため、○時以降に確認します 🎯"
2. GitHub/GitLab での賢い立ち回り
PR(プルリクエスト)の作り方
## PRテンプレート
### 🎯 概要
<!-- 何を実装したか簡潔に -->
### 📸 スクリーンショット
<!-- ビジュアルで変更を説明 -->
### ✅ チェックリスト
- [ ] テストを追加した
- [ ] ドキュメントを更新した
- [ ] セルフレビュー済み
### 🤔 相談事項
<!-- 迷っている点、意見が欲しい点 -->
### 📝 補足
<!-- ADHDの場合:思いついたアイデアもメモ -->
<!-- ASDの場合:実装の詳細な理由 -->
コードレビューの受け方
感情的にならないための工夫
- 批判ではない:改善提案として受け取る
- 学習機会:知識を増やすチャンス
- チーム貢献:品質向上に協力
返信の例
- 同意する時:「なるほど!修正します 👍」
- 質問する時:「この部分についてもう少し詳しく教えていただけますか?」
- 代替案を提示する時:「こういう方法もあると思うのですが、いかがでしょうか?」
3. ドキュメント駆動開発
先にドキュメントを書く
# 機能仕様書
## 目的
ユーザーがプロフィール画像をアップロードできるようにする
## 技術仕様
- エンドポイント: POST /api/users/avatar
- 画像形式: JPEG, PNG
- 最大サイズ: 5MB
- リサイズ: 200x200に自動変換
## 実装手順
1. APIエンドポイント作成
2. 画像検証処理
3. S3へのアップロード
4. DBに画像URLを保存
## 質問事項
- エラー時の処理はどうしますか?
- 既存画像の削除は必要ですか?
メリット:
- 実装前に認識を合わせられる
- 曖昧さが減る
- 後で「言った言わない」がない
4. 会議を生き延びる技
事前準備シート
会議情報
- 会議名:スプリント計画会議
- 日時:2024/01/15 10:00-11:00
事前準備チェックリスト
- 前回の自分のタスクを確認
- 今週やりたいタスクをリストアップ
- 質問事項をまとめる
持ち物
- 水分(ADHDの方:カフェイン入りがおすすめ)
- メモ帳(ASDの方:構造化されたテンプレートがおすすめ)
- フィジェットアイテム(見えない場所で)
会議中の戦略
- カメラONなら上半身だけ気をつける
- ミュートの確認を徹底
- 画面共有の準備
会議中のサバイバル術
ADHD向けのコツ
集中維持の方法
- 落書き:聞きながら手を動かす
- メモ:キーワードだけでも書く
- 質問:積極的に質問して参加
衝動制御の方法
- ミュート確認:発言前に必ず
- 5秒ルール:思いついても5秒待つ
- チャット活用:割り込まずに質問
ASD向けのコツ
構造化の方法
- アジェンダ:必ず事前確認
- 時間:終了時間を意識
- 役割:自分の発言タイミング確認
不安軽減の方法
- 定型文:発言パターンを準備
- 退出:体調不良時の退出方法確認
- 録画:後で見返せるか確認
5. タスク管理の極意
個人用タスク管理
Notion/Trelloでのボード構成例
- 📥 Backlog - やることリスト
- 🎯 Today - 今日やる(3つまで)
- 🚀 In Progress - 作業中(1つだけ)
- 👀 Review - レビュー待ち
- ✅ Done - 完了
タスク情報の記載例
- タイトル:ユーザー認証の実装
- 優先度:🔴 High
- 見積もり時間:3h
- 締切:2024/01/20
- メモ:JWTを使用
- チェックリスト:
- ログイン機能
- ログアウト機能
- トークン更新
チームとうまくやるための心理的テクニック
1. 自己開示のタイミング
## いつ、どこまで伝えるか
### 入社時
"集中して作業する時は、Slackの返信が遅れることがあります"
→ 特性とは言わず、働き方の好みとして
### 信頼関係ができてから
"実はADHD/ASDの特性があって、○○が得意で△△が苦手です"
→ 具体的な配慮をお願い
### 伝え方の例
"私、マルチタスクが少し苦手なんです。
でも、一つのことに集中すると高品質なコードが書けます。
可能であれば、タスクは1つずつ完了させていく形でもいいですか?"
2. 味方を作る
技術で信頼を得る方法
- コードレビュー:丁寧で建設的なレビュー
- ドキュメント:分かりやすい説明
- バグ修正:素早い対応
小さな貢献から始める
- ツール改善:開発環境の改善提案
- 自動化:面倒な作業を自動化
- 知識共有:学んだことをブログに
3. 境界線の引き方
OKなこと
- 技術的な相談
- 非同期でのコミュニケーション
- 事前に予定された会議
- ドキュメントベースの情報共有
NGなこと(丁寧に断る)
- 突然の長電話
- 集中時間中の雑談
- あいまいな依頼
- 締切のない追加タスク
上手な断り方の例
- 「今集中作業中なので、○時以降でもいいですか?」
- 「チャットで詳細を送っていただけますか?」
- 「優先順位を確認させてください」
成功事例:チーム開発で輝く発達障害エンジニア
Case 1: ドキュメント番長として認知される(ASD)
「コードレビューで細かいことを指摘しすぎて嫌われるかと思ったけど、『○○さんのレビューは勉強になる』と言われるようになった。今では新人教育も任されている」
Case 2: 自動化の鬼として重宝される(ADHD)
「繰り返し作業が大嫌いで、何でも自動化していたら、『業務効率化のエキスパート』扱いに。今ではCI/CDの構築はすべて任されている」
Case 3: 非同期コミュニケーションの達人(ASD+ADHD)
「リアルタイムの会話は苦手だけど、GitHubのIssueやPRでの議論は得意。技術的な議論をリードして、アーキテクチャの決定に関わるようになった」
ツールを味方につける
コミュニケーション効率化ツール
文章作成ツール
ツール名 | 用途 |
|---|---|
Grammarly | 英語の文法チェック |
DeepL Write | 自然な文章に |
文賢 | 日本語の校正 |
画面共有ツール
ツール名 | 特徴 |
|---|---|
Loom | 非同期で画面録画 |
CloudApp | GIF/動画で説明 |
Mermaid | 図で説明 |
タスク管理ツール
ツール名 | 特徴 |
|---|---|
Linear | シンプルで高速 |
Height | 柔軟なカスタマイズ |
Todoist | 個人タスク管理 |
まとめ:あなたの特性はチームの資産
チーム開発が苦手だと思っているあなた。 でも、視点を変えれば:
ADHD の特性:
- 新しいアイデアの源泉
- 突破力のあるコーディング
- 自動化・効率化の推進者
ASD の特性:
- 品質の守護者
- ドキュメントの達人
- 深い技術知識の持ち主
適切な環境と工夫があれば、あなたの特性はチームにとって欠かせない資産になります。
完璧なチームプレイヤーになる必要はありません。 あなたらしい貢献の仕方を見つければいいんです。
非同期コミュニケーションが当たり前になった今こそ、 発達障害エンジニアが輝く時代です。
ご注意
この記事は個人の体験に基づくものであり、医療的なアドバイスではありません。 発達障害の診断や治療については、必ず専門医にご相談ください。 また、記載されている情報は執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。